調査という仕事は、次のような順序で進むものだと考えられがちです。
調べる。
資料を見つける。
最後に報告書へまとめる。
一見すると自然な流れです。
しかし、複雑な知的財産調査や市場調査では、この進め方によって一つの問題が生じることがあります。
大量の情報を集めたにもかかわらず、次の判断や対応に本当に使える情報が少ない。
という問題です。
1. 同じ調査対象でも、目的が違えば必要な情報は変わる
侵害が疑われる店舗を調査する場合でも、目的によって必要な情報は異なります。
市場の状況を初期的に把握したいだけであれば、商品、価格、店舗、基本的な営業状況を確認するだけで足りる場合があります。
一方、その後ECプラットフォームに対応を求める予定があるのであれば、保存すべき情報の種類は変わる可能性があります。
弁護士による追加検討を予定しているのであれば、事業者間の関係、過去の記録、情報源の重要性がさらに高まります。
調査資料が行政手続や司法手続に利用される可能性がある場合には、時点の記録、情報の出所、事実同士の関係について、より厳密な整理が求められます。
つまり、
調査対象が同じでも、調査方法まで同じになるとは限りません。
調査範囲を決めるのは、
「誰を調べるか」だけではありません。
調査結果を、最終的に何のために使うのか。
という点も重要です。
2. 終点が明確であるほど、調査の途中で何を重視すべきかが見えやすくなる
調査を始める前に最終的な目的を理解していれば、早い段階で判断できます。
どのページを保存する必要があるのか。
どの事実を複数の情報源から確認する必要があるのか。
どの事業者間の関係をさらに追う価値があるのか。
どの情報は興味深くても、最終的な問題の解決には直接関係しないのか。
こうした判断ができれば、
資料が増えるほど、本当に重要な情報がかえって見えなくなる。
という状況を減らすことができます。
これは、単に調査の作業量を減らすためではありません。
一つひとつの調査が、最終的な判断にきちんとつながるようにするためです。
3. 調査報告は、資料の倉庫ではない
調査報告の価値は、ページ数で決まるものではありません。
調査報告書を受け取ったお客様が、そこから改めて「どの情報が重要なのか」を長い時間をかけて選び直さなければならないのであれば、情報を選別する負担をお客様へ移しただけになってしまいます。
有効な調査資料は、利用する人がより早く次の点を理解できるものであるべきです。
- 実際に何が起きているのか
- どの事実が確認されているのか
- どの関係に注意すべきなのか
- それぞれの判断は、どの情報に基づいているのか
- まだ確認できていない問題は何か
そのため、調査報告には「選ぶ」という作業が必要です。
何を掲載するかを決める基準は、
「時間をかけて見つけた情報だから入れる」ことではありません。
その情報が、お客様の最終的な問題を解決するために役立つかどうかです。
4. 報告書の完成は、次の仕事の始まりでもある
調査する側にとっては、報告書の提出で一つのプロジェクト段階が終わります。
しかし、お客様にとっては、そこから次の仕事が始まることが少なくありません。
調査結果をもとに、
さらに調査を続けるのか。
取引先や関係者と協議するのか。
プラットフォームへ対応を求めるのか。
弁護士に追加判断を依頼するのか。
あるいは、現時点では継続して状況を見るのか。
そうしたことを判断することになります。
そのため、私たちは調査報告を一つの「接続点」と考えています。
調査と意思決定をつなぐ。
事実とその後の対応をつなぐ。
そして、異なる専門家の仕事をつなぐ。
だからこそ、有効な調査は、終点から考える必要があります。