インターネット上には膨大な公開情報があります。

しかし、知的財産調査でよく直面するのは、「情報がまったく存在しない」という状況ではありません。

むしろ、

対象が存在することは分かっているのに、見つからない。

という状況です。

このとき、「見つからない」ことは、必ずしも調査の終わりを意味しません。

場合によっては、調査方法を変えるべきだという一つの手がかりになります。

1. 対象は、いつも見つけてもらいたいとは限らない

一般的な商業情報は、より多くの人に見てもらうことを目的としています。

一方、侵害に関係する活動では事情が異なる場合があります。

販売者にとっては、商品を買う消費者には見つけてもらう必要があります。

しかし、権利者、プラットフォーム、調査担当者にまで、実際の事業関係を簡単に把握してもらいたいとは限りません。

そのため、一つの事業活動の中に、

商品を求める消費者には見つけてもらう。

一方で、特定の調査者からは識別・追跡されにくくする。

という二つの相反する要請が存在することがあります。

その結果、情報は完全に隠されているわけではないものの、分かりやすい形では現れないことがあります。

  • 店舗名と企業名に明確な対応がない
  • プラットフォームごとに異なるアカウント名を使う
  • ブランド名を目立たせない、または別の表現に置き換える
  • 販売ページを閉じた後、新しいリンクで再び現れる
  • 連絡先、ウェブサイト、事業者情報がそれぞれ異なる情報環境に存在する

2. 「見つからない」ことは、検索の前提を見直すサインになる

同じキーワード、同じプラットフォーム、同じ判断方法で検索を続けても対象に近づけない場合、確認すべきことがあります。

そもそも、私たちが想定している「対象の現れ方」が間違っていないか。

ということです。

企業名で現れるはずだと思って探していても、実際にはブランド名や店舗名を中心に活動しているかもしれません。

商品名で検索すべきだと思っていても、型番、用途、外観の特徴で表現されている可能性があります。

対象が消えたように見えても、単に別のアカウントやプラットフォームへ移動しただけかもしれません。

つまり、「結果が出ない」ということ自体も、一つの情報です。

  • キーワードは適切か
  • 探しているプラットフォームは適切か
  • 対象が表現方法を変えていないか
  • 既知の事業者やアカウントは現在も有効か
  • 別の周辺情報から対象へつながる経路がないか

を改めて確認する必要があることを示しています。

3. 経験の価値は、方向を変えるべき時を見極めることにもある

検索ツールは、多くの結果をすばやく返してくれます。

しかし、本当に難しいのは、

このまま同じ方向を探し続ける意味があるのか。

いつ、その検索を止めるべきなのか。

次は、どこから調査に入り直すべきなのか。

そうしたことを判断することです。

侵害に関係する活動を長く見ていると、似たような変化を繰り返し目にします。

情報が分散する。

名称が変わる。

アカウントが入れ替わる。

事業者や販売チャネルが変化する。

こうした経験が、そのまま答えを与えてくれるわけではありません。

しかし、

対象が見つからないのは、対象が存在しないからではなく、探し方のほうがすでに機能しなくなっているのではないか。

と早い段階で気づく助けにはなります。

調査の価値は、「どれだけ多く見つけたか」だけで決まるものではありません。

ときには、

なぜ見つからなかったのかを理解することが、次の有効な手がかりの始まりになります。